2.X線写真撮影の配慮と工夫
カテゴリー: デンタルX線写真の撮り方・読み方
登録日: 2007/12/05
はじめに
前回は,主に「黒化度」について,私が注意を払っている点を述べたが,今回
は撮影時の「位置付け」も含んだ規格化について述べることにする.
歯科臨床において,X線写真が初診時の診断と,術後の経過観察に重要な役割
を果たすことは,誰もが認める事である.この2つの目的のために撮影されるX
線写真は,ある一定範囲の条件を満たすことが,必要であると私は考える.その
条件について,少し考えてみたい.
X線写真の正確さの基準
X線写真は,3次元の立体(歯牙と歯周組織)の暗影を,X線写真フィルムと
いう2次元の平面に投影したものである.従って,被写体とフィルムの位置関係
が異なる場合は得られるX線像が違う.また,歯周組織は一定の厚みがあるの
で,被写体とフィルムの位置関係が同じでも,通過するX線(主線)の方向が異
なる場合も得られるX線像が違う.
古くは,プリチャードが,X線写真の正確さの基準として,・頬舌側の咬頭が一
致していること.・隣接面が重なっていないこと.・髄室が明瞭であること.を
挙げているが,
これらの条件は,X線(主線)の方向によって分類した撮影法でいうと,・は,
平行法,(図1- a )・は,正放線法,(図1- b )・は,平行法かつ正放線
法(図1- c )であることを要求する事になると思われる.
平行法と二等分法
平行法と二等分法は,ともに歯根尖撮影法で,二等分法は歯牙の実際の長さと,
X線フィルム上の長さが,等しくなる方法である.根管治療において挿入したフ
ァイルとX線写真を用いて,根管長を測定する際には,有効な撮影法であるが,
歯周病診断の際に,臼歯部の歯槽頂線の読影するときには,平行法の方が有利で
ある.
正放線撮影法と偏心投影法
歯牙と歯周組織の撮影においては,一般的に正放線撮影法が,得られる情報が多
い.しかし,偏心投影法によって得られる情報は,正放線撮影法により得られる
情報を補うことが多く,両者を組み合わせて総合的に診断を行えば,非常に有効
なことが多い.(図2-a, b)
X線規格撮影法の利点
これらを可及的に満たすX線写真を原点とした,X線規格撮影法の利点として
は,・得られる情報量が多い.・同一のX線像が得やすい.の2点が挙げられる
と思う.
初診時の(最初の一枚の)X線写真の「黒化度」や「位置付け」を,細かく規定
し,規格化する事は,ある意味で,面倒なことである.経過観察時の,2枚目以
降のX線写真を1枚目に合わせられれば,問題ないと思われる先生もおられると
思うが,実際にやってみると,これが意外と難しい.やはり,最初の1枚が正確
なX線写真となるように,規格化し,同じ規格で2枚目以降のX線写真を撮影す
るほうが,ずっと楽であるというのが,私の実感である.
思い出のX線写真
図3- a,bは,故人となられた北九州歯学研究会の先輩の山内厚先生に,規格
撮影法について教えていただいた時のX線写真である.私はX線写真を読影する
時には,「歯槽頂線」「歯槽硬線」「歯根膜腔」「歯槽骨梁」の4項目を特に注
意しているが,この一組のX線写真は,位置付けが異なったときのこれら4項目
への影響を,右下6番一歯で,端的に表しており非常に興味深かったのを思い出
す.
「歯槽頂線」a では,右下6番近心の歯槽頂線が,異常無いことをかろうじて
確認できる.しかし,b のX線写真では,両隣在歯に重なり正常,異常の識別
は不可能である.また,歯槽頂線ではないが,骨縁下欠損部分の斜面も,a で
は,白線として見えるが,b では,明瞭な線としては見えない.
「歯槽硬線」a では,右下6番近心の歯槽硬線が,明瞭に確認できる.しか
し,b のX線写真では,歯槽硬線は,不明瞭である.
「歯根膜腔」a では,右下6番近心の歯根膜腔の,やや拡大したところが確認
できる.しかし,b のX線写真では,歯根膜腔は,不明瞭である.
「歯槽骨梁」a では,右下6番遠心周囲の歯槽骨梁が,他の部位と明らかに異
なり,いわゆる骨硬化像を呈しているのが確認できる.しかし,b のX線写真
では,歯槽骨梁は,他の部位とさほど変わり無く,いわゆる骨硬化像は,認めら
れない.
この2枚のX線写真はプリチャードが挙げた,X線写真の正確さの基準からす
ると,a の方がb より正確に位置付けがなされていることになる.位置付けの
異なるX線写真の間で,このように得られる情報量が違うのであれば,当然,情
報量の多い正確に位置付けされた,X線写真を撮りたいと思うのは誰しも思うこ
とであると思う.昨今,歯周治療において,GTRやエムドゲインなどの,歯周組
織の再生を期待できる材料が開発されつつある.その評価に際して,X線写真の
重要性は,ますます増加すると思われる.
正確に位置付けされた規格撮影法の実際
規格撮影法の利点や,正確さの基準について,述べてきたが,さらに理想的なX
線像の条件として,下川は ・被写体がフィルムの中にすべて完全に収まってい
る ・被写体の両隣在歯が完全に写っている ・咬合平面(または切端ライン)
がフィルム縁とできる限り平行となっている ・被写体像が実物大で変形してい
ない ・被写体像のそれぞれの線が鮮明かつ明瞭である事を挙げている.これら
のことを満足するために,私をはじめ北九州歯学研究会の会員全員,阪神技研の
インジケーターを使っている.このインジケーターを使い,一定の咬ませ方をす
れば,歯牙とフィルムの位置関係と,X線(主線)の方向の規格化ができ,非常
に有効であると思う.図4上段は現在市販中ののインジケーター「である.初期
の製品と違い,歯牙と噛み合うパッドの部分が,高圧蒸気滅菌に対応できるよう
に材質が改良されたが,私はピンクのパッドの部分が使いづらいので,初期のタ
イプの青いパッドを注文して自分で交換して,使っている.(図4下段)インジ
ケーターの消毒は,薬液に浸すことで対応している.そして,全顎を撮影すると
きは,ほとんどの場合14枚法で,撮ってる.つまり臼歯部を,4番の近心がきれ
いに写るもの(図5-上)と,7番の遠心がきれいに写るもの(図5-下) の,
2枚で撮るようにしている.理由は,歯周病において,骨欠損の起きやすい部位
が,臼歯部では,4番7番の部位であるからである.
私の場合,この7番の遠心に,一定の幅(ある程度の大きさの欠損なら完全に写
り込む幅)の骨が写るように,インジケーターを合わせるときに補助器具を使う
ようにしている.(図6)
補助器具は,市販の糸楊枝を改造して作るが,要は,青いパッドの長さを,口腔
内に再現できる,定規を作るのである.
【作り方と使い方】・2本の糸楊枝を適当な位置で切断し,組み合わせてレジン
で接着して青いパッドの長さに合わせた,糸楊枝の補助器具を作る.(図6)・
7番の遠心に糸楊枝の補助器具を合わせ,他のもう一端が指す位置を覚えてお
く.(図7-上)・そこに青いパッドの角をあわせてインジケーターを咬ませ
る.この時当然,青いパッドの奥の端は,7番遠心端と一致する.(図7-下)
・そして撮影する.これを使うと,常に7番遠心側を一定幅に位置づけができ
る.また,糸楊枝の指す位置が,4番の近心より前方にあれば,臼歯部を1枚で
撮れることがわかる.(図8)
この時,・フィルムをインジケーターに挟む位置を常に,一定にする.・フィル
ムをできるだけ歯牙より離し,歯軸とフィルムができるだけ平行になるようにす
ることが必要で,実際には図9- a,b のように,青いパッドの一辺と,頬側咬
頭頂を一致させるように咬ませる.これが私のX線規格撮影へのこだわりであ
る.
X線写真規格化の限界と読影
このように,細心の注意を払って,できる限りの規格化を図っても,私の現在
のシステムには,限界があることも事実である.
まず,「黒化度」についていえば,現像液の疲労の問題がある.今のところ,
大型自現機(マックスライン,NIX)も,小型自現機(DEX-」,阪神技研)も一
ヶ月を目安に,現像・定着液を交換しているが,交換前後で黒化度が違うのは事
実である.液の疲労にあわせて,コントラストのチェックをし,現像液温を調節
し黒化度を一定にする方法もあるが,現在のところ,できたX線写真を見て現像
液温の若干の調整をしているのみである.液温を上げすぎるとフィルム上の粒子
の荒れが目立ってくるので,感覚的な話で申し訳ないが,X線像のキレが無くな
ってきたら,すぐに液の交換をするようにしている.
次に,「位置付け」であるが,インジケーターのパッドが柔らかい材質なの
で,患者の咬む力の強弱により,フィルムの位置に若干の差がでる.また,撮影
する部位や,その対合歯も含めて,補綴処置により咬合面形態が変わると,位置
付けが変化しやすい.このことは,特に術前術後の比較において問題となりやす
い.
前回と今回の2回にわたり,X線写真撮影の規格化について,述べてきた.そ
の最後に,規格化に限界があると述べると,今までの話を否定するように受け取
られないかと,心配するが,決してそのようなことはない.黒化度にしても,位
置付けにしても,後は読影の時に,頭の中で修正すればよいと思う.ただし,そ
の修正の幅が,小さければ小さい程,診断の誤差は減るし,X線写真の資料とし
ての客観性は増えると思う.
X線写真撮影の規格化を追求したときに,得られた知識と経験を利用すれば,よ
り詳細な読影が可能となり,自分自身の患者の診断能力も上がる.また,インタ
ーネット,出版,新しい歯科材料の開発など,さまざまな情報が行き交う現在に
おいては,その情報の取捨選択が必要となる.その際にも,これらの知識と経験
は必ず役立つと思う.
次回より,X線写真の読影について述べるが,この2回分の基礎知識をふまえた
上での読影所見を述べてみたい.
前回は,主に「黒化度」について,私が注意を払っている点を述べたが,今回
は撮影時の「位置付け」も含んだ規格化について述べることにする.
歯科臨床において,X線写真が初診時の診断と,術後の経過観察に重要な役割
を果たすことは,誰もが認める事である.この2つの目的のために撮影されるX
線写真は,ある一定範囲の条件を満たすことが,必要であると私は考える.その
条件について,少し考えてみたい.
X線写真の正確さの基準
X線写真は,3次元の立体(歯牙と歯周組織)の暗影を,X線写真フィルムと
いう2次元の平面に投影したものである.従って,被写体とフィルムの位置関係
が異なる場合は得られるX線像が違う.また,歯周組織は一定の厚みがあるの
で,被写体とフィルムの位置関係が同じでも,通過するX線(主線)の方向が異
なる場合も得られるX線像が違う.
古くは,プリチャードが,X線写真の正確さの基準として,・頬舌側の咬頭が一
致していること.・隣接面が重なっていないこと.・髄室が明瞭であること.を
挙げているが,
これらの条件は,X線(主線)の方向によって分類した撮影法でいうと,・は,
平行法,(図1- a )・は,正放線法,(図1- b )・は,平行法かつ正放線
法(図1- c )であることを要求する事になると思われる.
平行法と二等分法
平行法と二等分法は,ともに歯根尖撮影法で,二等分法は歯牙の実際の長さと,
X線フィルム上の長さが,等しくなる方法である.根管治療において挿入したフ
ァイルとX線写真を用いて,根管長を測定する際には,有効な撮影法であるが,
歯周病診断の際に,臼歯部の歯槽頂線の読影するときには,平行法の方が有利で
ある.
正放線撮影法と偏心投影法
歯牙と歯周組織の撮影においては,一般的に正放線撮影法が,得られる情報が多
い.しかし,偏心投影法によって得られる情報は,正放線撮影法により得られる
情報を補うことが多く,両者を組み合わせて総合的に診断を行えば,非常に有効
なことが多い.(図2-a, b)
X線規格撮影法の利点
これらを可及的に満たすX線写真を原点とした,X線規格撮影法の利点として
は,・得られる情報量が多い.・同一のX線像が得やすい.の2点が挙げられる
と思う.
初診時の(最初の一枚の)X線写真の「黒化度」や「位置付け」を,細かく規定
し,規格化する事は,ある意味で,面倒なことである.経過観察時の,2枚目以
降のX線写真を1枚目に合わせられれば,問題ないと思われる先生もおられると
思うが,実際にやってみると,これが意外と難しい.やはり,最初の1枚が正確
なX線写真となるように,規格化し,同じ規格で2枚目以降のX線写真を撮影す
るほうが,ずっと楽であるというのが,私の実感である.
思い出のX線写真
図3- a,bは,故人となられた北九州歯学研究会の先輩の山内厚先生に,規格
撮影法について教えていただいた時のX線写真である.私はX線写真を読影する
時には,「歯槽頂線」「歯槽硬線」「歯根膜腔」「歯槽骨梁」の4項目を特に注
意しているが,この一組のX線写真は,位置付けが異なったときのこれら4項目
への影響を,右下6番一歯で,端的に表しており非常に興味深かったのを思い出
す.
「歯槽頂線」a では,右下6番近心の歯槽頂線が,異常無いことをかろうじて
確認できる.しかし,b のX線写真では,両隣在歯に重なり正常,異常の識別
は不可能である.また,歯槽頂線ではないが,骨縁下欠損部分の斜面も,a で
は,白線として見えるが,b では,明瞭な線としては見えない.
「歯槽硬線」a では,右下6番近心の歯槽硬線が,明瞭に確認できる.しか
し,b のX線写真では,歯槽硬線は,不明瞭である.
「歯根膜腔」a では,右下6番近心の歯根膜腔の,やや拡大したところが確認
できる.しかし,b のX線写真では,歯根膜腔は,不明瞭である.
「歯槽骨梁」a では,右下6番遠心周囲の歯槽骨梁が,他の部位と明らかに異
なり,いわゆる骨硬化像を呈しているのが確認できる.しかし,b のX線写真
では,歯槽骨梁は,他の部位とさほど変わり無く,いわゆる骨硬化像は,認めら
れない.
この2枚のX線写真はプリチャードが挙げた,X線写真の正確さの基準からす
ると,a の方がb より正確に位置付けがなされていることになる.位置付けの
異なるX線写真の間で,このように得られる情報量が違うのであれば,当然,情
報量の多い正確に位置付けされた,X線写真を撮りたいと思うのは誰しも思うこ
とであると思う.昨今,歯周治療において,GTRやエムドゲインなどの,歯周組
織の再生を期待できる材料が開発されつつある.その評価に際して,X線写真の
重要性は,ますます増加すると思われる.
正確に位置付けされた規格撮影法の実際
規格撮影法の利点や,正確さの基準について,述べてきたが,さらに理想的なX
線像の条件として,下川は ・被写体がフィルムの中にすべて完全に収まってい
る ・被写体の両隣在歯が完全に写っている ・咬合平面(または切端ライン)
がフィルム縁とできる限り平行となっている ・被写体像が実物大で変形してい
ない ・被写体像のそれぞれの線が鮮明かつ明瞭である事を挙げている.これら
のことを満足するために,私をはじめ北九州歯学研究会の会員全員,阪神技研の
インジケーターを使っている.このインジケーターを使い,一定の咬ませ方をす
れば,歯牙とフィルムの位置関係と,X線(主線)の方向の規格化ができ,非常
に有効であると思う.図4上段は現在市販中ののインジケーター「である.初期
の製品と違い,歯牙と噛み合うパッドの部分が,高圧蒸気滅菌に対応できるよう
に材質が改良されたが,私はピンクのパッドの部分が使いづらいので,初期のタ
イプの青いパッドを注文して自分で交換して,使っている.(図4下段)インジ
ケーターの消毒は,薬液に浸すことで対応している.そして,全顎を撮影すると
きは,ほとんどの場合14枚法で,撮ってる.つまり臼歯部を,4番の近心がきれ
いに写るもの(図5-上)と,7番の遠心がきれいに写るもの(図5-下) の,
2枚で撮るようにしている.理由は,歯周病において,骨欠損の起きやすい部位
が,臼歯部では,4番7番の部位であるからである.
私の場合,この7番の遠心に,一定の幅(ある程度の大きさの欠損なら完全に写
り込む幅)の骨が写るように,インジケーターを合わせるときに補助器具を使う
ようにしている.(図6)
補助器具は,市販の糸楊枝を改造して作るが,要は,青いパッドの長さを,口腔
内に再現できる,定規を作るのである.
【作り方と使い方】・2本の糸楊枝を適当な位置で切断し,組み合わせてレジン
で接着して青いパッドの長さに合わせた,糸楊枝の補助器具を作る.(図6)・
7番の遠心に糸楊枝の補助器具を合わせ,他のもう一端が指す位置を覚えてお
く.(図7-上)・そこに青いパッドの角をあわせてインジケーターを咬ませ
る.この時当然,青いパッドの奥の端は,7番遠心端と一致する.(図7-下)
・そして撮影する.これを使うと,常に7番遠心側を一定幅に位置づけができ
る.また,糸楊枝の指す位置が,4番の近心より前方にあれば,臼歯部を1枚で
撮れることがわかる.(図8)
この時,・フィルムをインジケーターに挟む位置を常に,一定にする.・フィル
ムをできるだけ歯牙より離し,歯軸とフィルムができるだけ平行になるようにす
ることが必要で,実際には図9- a,b のように,青いパッドの一辺と,頬側咬
頭頂を一致させるように咬ませる.これが私のX線規格撮影へのこだわりであ
る.
X線写真規格化の限界と読影
このように,細心の注意を払って,できる限りの規格化を図っても,私の現在
のシステムには,限界があることも事実である.
まず,「黒化度」についていえば,現像液の疲労の問題がある.今のところ,
大型自現機(マックスライン,NIX)も,小型自現機(DEX-」,阪神技研)も一
ヶ月を目安に,現像・定着液を交換しているが,交換前後で黒化度が違うのは事
実である.液の疲労にあわせて,コントラストのチェックをし,現像液温を調節
し黒化度を一定にする方法もあるが,現在のところ,できたX線写真を見て現像
液温の若干の調整をしているのみである.液温を上げすぎるとフィルム上の粒子
の荒れが目立ってくるので,感覚的な話で申し訳ないが,X線像のキレが無くな
ってきたら,すぐに液の交換をするようにしている.
次に,「位置付け」であるが,インジケーターのパッドが柔らかい材質なの
で,患者の咬む力の強弱により,フィルムの位置に若干の差がでる.また,撮影
する部位や,その対合歯も含めて,補綴処置により咬合面形態が変わると,位置
付けが変化しやすい.このことは,特に術前術後の比較において問題となりやす
い.
前回と今回の2回にわたり,X線写真撮影の規格化について,述べてきた.そ
の最後に,規格化に限界があると述べると,今までの話を否定するように受け取
られないかと,心配するが,決してそのようなことはない.黒化度にしても,位
置付けにしても,後は読影の時に,頭の中で修正すればよいと思う.ただし,そ
の修正の幅が,小さければ小さい程,診断の誤差は減るし,X線写真の資料とし
ての客観性は増えると思う.
X線写真撮影の規格化を追求したときに,得られた知識と経験を利用すれば,よ
り詳細な読影が可能となり,自分自身の患者の診断能力も上がる.また,インタ
ーネット,出版,新しい歯科材料の開発など,さまざまな情報が行き交う現在に
おいては,その情報の取捨選択が必要となる.その際にも,これらの知識と経験
は必ず役立つと思う.
次回より,X線写真の読影について述べるが,この2回分の基礎知識をふまえた
上での読影所見を述べてみたい.